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「トロッコ問題」における判断と熟慮時間の関係を分析 判断に伴う責任から逃れようとする日本人大学生の心の特性を検討

2022年03月28日掲載

研究?産学

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本研究のポイント

◇時間的な制約がある状況とない状況で、「トロッコ問題」に対する心理的反応の違いを検討。
◇実験の結果、日本人大学生は功利主義的な判断を相対的に示さない可能性が、また、じっくり考えるうちに責任を逃れようとする結果として、功利主義的な判断がますます示されにくくなる可能性が示唆された。
◇功利主義的な判断か義務論的な判断かという分析枠組みは、「トロッコ問題」における日本人の判断を考察する上では適切ではない恐れがあり、今後は「判断に伴う責任そのものから逃れようとする心の特性」に着目する必要がある。

概要

 大阪市立大学大学院文学研究科の橋本 博文准教授、大阪市立大学都市文化研究センターの前田 楓研究員、大阪市立大学大学院文学研究科の松村 楓大学院生の研究グループは、「トロッコ問題」に対する時間的制約の効果について検討し、日本人大学生は熟慮を重ねると義務論的判断がより顕著になる可能性を明らかにしました。
 トロッコ問題とは、「多数の命を救うために一人の命を犠牲にする判断は、道徳的に正しいのか」が問われる有名な道徳ジレンマ課題です。ここでは、多数の命を救うために一人を犠牲にする判断(功利主義的な判断)と、結果の善し悪しにかかわらず一人の命を犠牲にすることは許されないとする判断(義務論的な判断)のどちらを優先するかが問われています。これら二つの判断を扱う近年の心理学研究では、二重過程理論が注目されており、この理論を踏まえれば、義務論的判断は自動的な直観システムによるもの、また、功利主義的判断は論理的な熟考システムによるものと捉えることができます。
 二重過程理論を扱う先行研究によれば、義務論的判断が功利主義的判断よりも先行すると予測できます。しかし、日本人大学生119名を対象とする本研究の結果、時間的な制約のもとでの直観的判断(理性的判断)と熟慮した後の判断(話し合い後の判断)を比較すると、先行研究とは異なり義務論的判断へと人々の判断が変化していく可能性が示唆されました。この研究の成果は2022年3月3日(木)国際学術雑誌「Frontiers in Psychology」(IF=2.988)に掲載されました。

補足説明

  • トロッコ問題???「多数の命を救うために一人の命を犠牲にする判断は、道徳的に正しいのか」が問われる道徳ジレンマ課題
  • 功利主義的な判断???多数の命を救うために一人を犠牲にする判断
  • 義務論的な判断 ???結果の善し悪しにかかわらず一人の命を犠牲にすることは許されないとする判断

研究者からのコメント


橋本 博文准教授

 私たちは、文化によって心の働きが異なるという常識的な理解を超えて、「どのように」、そして「なぜ」心の文化差が示されるのかを、調査や実験を通じて考えています。今回の実験も、トロッコ問題についてのジョシュア?グリーンによる議論(『モラル?トライブズ:共存の道徳哲学へ』)についてゼミナールで話し合ったことをきっかけに行ったものです。「責任回避戦略」をキーワードにすれば、日本人の心の特性について、もう少し見通し良く理解できる気もしますが、当然ながら、今回の結果のみで何らかの結論を示すことができるとは考えていません。この知見を一つの足掛かりとしながら、心や行動の文化差について、もう少し分析できればと考えています。

掲載誌情報

雑誌名:

Frontiers in Psychology(IF = 2.988)

論文名:

Fickle Judgments in Moral Dilemmas: Time Pressure and Utilitarian Judgments in an Interdependent Culture

著者:

Hirofumi Hashimoto, Kaede Maeda, Kaede Matsumura

掲載URL:

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fpsyg.2022.795732/full

資金?特許等について

 本研究は、日本学術振興会科学研究費基盤研究(直観的協力行動の集団拘束性に関する比較文化心理学的研究[課題番号 : 21K02992])の対象研究です。