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記憶で変わる脳内ネットワーク 記憶の獲得後には、記憶を表現する神経活動パターンが脳領域横断的に同期して生じることを発見

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本研究のポイント

◇1つの記憶にも複数の脳領域が関与しているが、異なる脳領域で並列的に処理されて
いる記憶情報がどのように統合されているのかは不明であった。
◇様々な脳領域に存在する記憶を表現する活動パターンは、記憶を獲得する前から存在
しているが、記憶の獲得後に脳領域を超えて同期するようになり、その記憶の想起の際
に同様の同期活動が生じることを世界で初めて明らかにした
◇脳波に一過的に生じるバースト活動が、神経活動パターンの脳領域横断的な同期に重要
な役割を担っていることが明らかとなった。
◇これらの成果は、バースト活動を介して記憶情報が脳領域横断的に統合されており、
この統合様式の変化が記憶の形成と密接に繋がっていることを示唆している。

概要

 

 大阪市立大学大学院医学研究科神経生理学教室の宮脇 寛行助教、水関 健司教授らの研究グループは、様々な脳領域に存在するアンサンブル(同時に活動し特定の記憶情報を表現する神経細胞集団)が、記憶の獲得後に同期して活動するようになることを世界で初めて明らかにしました。

 これまで、ある1つの記憶に対応するアンサンブルが様々な脳領域に存在していることが知られていました。このことは、1つの記憶に関する情報が脳の様々な領域で並列的に処理されていることを意味していますが、これらの脳全体に分散した情報がどのように統合されているのかは不明でした。

 そこで本研究では恐怖条件づけ課題(注1)を用い、この記憶に関与することが既に分かっている海馬(注2)、扁桃体(注3)、大脳皮質の前頭前野(注4)の3つの脳領域から同時に多数の神経細胞の活動を記録する多領域同時?大規模電気生理学記録を行いました。その結果、記憶の獲得によって、扁桃体?前頭前野および海馬?前頭前野の間でアンサンブルが同期して活動するようになることを発見しました。これらの同期活動は記憶を想起する際に再び生じていました。さらに、扁桃体や前頭前野のアンサンブルそのものは、記憶の獲得前から存在していることを明らかにしました。

 また本研究では、脳領域横断的な同期活動が100ミリ秒程度の一過的な脳波上のバースト活動の際に特に強く生じることも明らかにしました。このようなバースト活動は海馬ではよく知られており、記憶の固定化(注5)に必要であることが知られていましたが、なぜバースト活動が記憶の固定化に関わるのかは不明でした。本研究の結果は、脳波上のバースト活動は記憶情報を表現する細胞集団を脳領域横断的に同期させることで記憶の定着を促進している可能性を示唆しています。

 これらは、新たな経験の情報が既に存在している活動パターンに紐付けられることで保持され、それらのパターン同士が一過的なバースト活動を介して脳領域横断的に繋がり合うことで記憶が形成されることを示した世界初の成果です。脳は経験したことを素早く記憶する柔軟性と、記憶したことを長期間保持する安定性の2つの相反する性質を両立させています。本研究の結果は、「記憶の獲得前から存在する局所ネットワーク」と「経験依存的に生じる脳領域横断的なネットワーク」という異なるダイナミクスをもつネットワークを組み合わせることで、脳が柔軟性と安定性を両立させている可能性を示唆しています。これはヒトを含む動物の記憶メカニズムに迫る成果であり、認知症や心的外傷後ストレス障害などの記憶機能関連障害の病態解明に繋がることが期待されます。

 本研究成果は2022年3月11日(金)にNature Communications誌(IF = 14.919)に掲載されました。

補足説明

(注1)恐怖条件づけ課題:中立的な刺激と嫌悪刺激を組み合わせて提示することで両者の関係を記憶する課題。ヒトにおける心的外傷後ストレス障害の動物モデル。
(注2)海馬:大脳の側頭葉内側部に位置し、エピソードの記憶を獲得するのに不可欠な脳領域。
(注3)扁桃体:大脳の側頭葉内側部に位置し、恐怖や不安などの情動を司る脳領域。
(注4)前頭前野:大脳の前頭葉に位置し、意思決定や動機づけをはじめとする様々な高次機能を担う脳領域。
(注5)記憶の固定化:まず不安定な短期記憶として獲得された記憶が、睡眠中などに安定な長期記憶に変換されるプロセスのこと。

研究者からのコメント


宮脇 寛行助教

 ある経験の記憶を担うアンサンブルがその経験の前から存在しているというのは「これから知ることを既に知っている」というパラドックスに他なりません。このパラドックスに対し、今回の研究で「アンサンブルは経験を通して他のアンサンブルと繋がり合うことで後から意味が決まる」という解決の可能性を示せたのではないかと思います。

掲載誌情報

雑誌名:

Nature Communications(IF = 14.919)

論文名:

De novo inter-regional coactivations of preconfigured local ensembles support memory.

著者:

Hiroyuki Miyawaki、Kenji Mizuseki

掲載URL:

https://www.nature.com/articles/s41467-022-28929-x

資金?特許等について

 本研究は、科学研究費補助金(21H00209、20K06860、20H05477、20H03356、19H05225、19H04986、16H04656、16H01279)、GSKジャパン、内藤記念科学振興財団、武田科学振興財団、東レ科学振興会、上原記念生命科学財団、大阪市立大学戦略的研究の助成対象研究です。